こんにちは。保険代理店サークルの菊地です。

令和7年10月、高市早苗さんが総理大臣に就任され高市政権が発足しました。サナエノミクスという名の経済政策を掲げ、国会では連日のように論戦が行われています。令和7年11月時点の具体的な動きとしては、私たち国民の手取りを増やして家計の負担を減らすために即効性のある対策を最優先事項とし、早くもガソリン暫定税率の廃止に着手しています。

今回のコラムでは、サナエノミクスによってこれから起こることと、それが私たち国民の生活にどんな効果をもたらすのかを考察しました。

サナエノミクス:高市内閣の総合経済対策とは

令和7年11月21日に、高市内閣の総合経済対策について会見がありました。そこで述べられたのは、私たち国民の生活を守るための財政出動です。財政出動とは政府による公共事業への支援・減税のことで、高市内閣による財政出動は次の3つの柱で構成されます。

  • 第1の柱:生活の安全保障・物価高への対応
  • 第2の柱:危機管理投資・成長投資による強い経済の実現
  • 第3の柱:防衛力と外交力の強化

*出典:首相官邸 総合経済対策等についての会見

そのうちの『第1の柱:生活の安全保障・物価高への対応』が私たち国民の生活に直接的な効果がありそうです。本コラムでは、第1の柱にある5つの対策について考察します。

*出典:首相官邸 総合経済対策等についての会見

ちなみに、経済政策(サナエノミクス)とは政府が掲げる長期的な方針そのものを指しています。対して経済対策とは、課題1つ1つに対する短期的で具体的な実行手段を言います。

ガソリンの暫定税率廃止

1つ目の対策は、ガソリンにかかっている暫定税率の廃止です。高市総理は総裁選公約で『ガソリン税と軽油引取税の暫定税率を廃止し、地方財源も確保します。』と宣言されていました。総理大臣に就任されて最初に着手したのが、このガソリン暫定税率の廃止です。

ガソリン暫定税率とは、本来のガソリン税に上乗せされている税金のことです。暫定という名のとおり一時的な措置で終わるはずでしたが、1974年の開始から延長され続け、2025年現在で51年も続いていました。

暫定税率はガソリン1リットルあたり25.1円です。さらに暫定税率には10%の消費税もかかるので、合計27.6円が1リットルのガソリン代に上乗せされているわけです。税金に税金をかけているので二重課税だという批判が多くありました。

高市内閣の経済対策で、ガソリン暫定税率は令和7年12月31日で廃止されます。すでにガソリン価格が下がっている地域が出てきているのでご存知の方も多いでしょう。なお、トラックやバスに使う軽油の暫定税率の廃止はもう少し先で、令和8年4月1日までを目途に調整中です。

ガソリン暫定税率がなくなれば、家計への負担が軽くなるのはもちろん、物流コストが下がることも見込めます。それが商品価格に反映すれば、結果的に物価高を抑える効果も期待できます。

ただし、ひとつの税がなくなるということは国の税収が減ることにつながります。暫定税率は主に道路整備に使われています。令和7年1月には埼玉県で道路の陥没事故が起きていますし、道路整備は看過できない問題です。減る税収の穴埋めと道路整備は喫緊の課題と言えます。

*参照:経済産業省 資源エネルギー庁 ガソリンの暫定税率(当分の間税率)の廃止でガソリン代はどうなるの?よくいただく質問に、資源エネルギー庁がお答えします!

電気・ガス代支援

2つ目の対策は、電気代とガス代の支援です。令和8年1月~3月までの寒さが一番厳しい冬に実施されます。高市総理が総合経済対策の会見で述べた目安は、3カ月で1世帯あたり7,000円程度の負担軽減です。

ただし、支援といっても私たち国民がお金を受け取るわけではありません。政府が電力会社・ガス会社に補助金を支援し、その補助金分が私たち国民の支払う電気代・ガス代から差し引かれます。これが財政出動の仕組みです。

ところで、日本はかつての四季から二季に変わりつつあります。過ごしやすい春と秋の期間が少なくなり、冷暖房が必須の夏と冬がメインの状態です。特に夏は命に関わる暑さが当たり前になっているので冷房は必需品です。恐らく今後は夏の電気代支援も実施されると推測します。

*参照:経済産業省 資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援

所得税 年収の壁見直し

3つ目の対策は、所得税の年収の壁の見直しです。総裁選公約では『年収の壁の引上げ等「働く意欲を阻害しない」制度を整備します。』と宣言されていました。

ひとくちに年収の壁と言っても、所得税の壁、扶養の壁、社会保険の強制加入の壁の3つがあります。今回の対策ではまず所得税の壁の引き上げを行う予定です。令和7年1月の税制改正では年収160万円まで所得税が非課税になりましたが、高市内閣の経済対策ではさらに高い178万円までの引き上げを目指しています。この対策が実現すれば、主にパートタイムの労働者の手取りが増えるので、経済政策の第一の柱である『生活の安全保障・物価高への対応』に効果があります。

とはいえ、所得税の壁だけでなく扶養の壁(年収130万円)、社会保険の強制加入の壁(年収106万円)のについても早急な対策が必要です。特に社会保険料については、お給料から天引きされる額は所得税よりもずっと多いです。現時点では企業への助成金制度によって労働者の手取りが減らないような対策がありますが、これは2025年度末までの時限措置です。社会保険料がネックで働き控えせざるを得ない世帯は多いと思いますので、なるべく手取りが減らない仕組みを作ってほしいところです。

自治体向け重点支援交付金の拡充

4つ目の対策は、自治体向けの重点支援交付金の拡充です。総裁選公約では『自治体向け重点支援交付金を拡充し、対象・地域毎の実情に合った支援を速やかに実施します。』と宣言されていました。

自治体向けの重点支援交付金は、国が地方自治体にお金を交付します。各自治体は地域で特有のニーズや課題に合わせて柔軟な使い方ができるので、国が行う一律の支援よりも国民一人一人に寄り添った効果が期待できますし、立法の時間もかからないのでより早い支援ができます。

国が推奨する支援のメニューは以下の通りです。各自治体はこれらを参考に、地域の事情に合わせた支援を行います。

  • 生活者支援:プレミアム付き商品券、地域クーポン券、おこめ券、低所得者への現金給付
  • エネルギー支援:LPガス・灯油の給付、水道料金の減免
  • 事業者・地域産業への支援:医療機関・介護施設・学校給食などへの物価高騰対策の補助、農業や水産業への支援、中小企業の賃上げ支援

重点支援交付金の実施時期はまだ決まっていません。当初は令和7年年内を計画していましたが、交付金の閣議決定が11月21日だったため、支援を実施する自治体側としては残り1カ月しかなく対応は難しいようです。支援が私たち国民のもとに届くまで時間はかかるかもしれませんが、そのぶん各自治体には地域の困りごとに照準を合わせた対応ができるよう検討してほしいものです。

物価高対応子育て応援手当

5つ目の支援は、物価高に対応するための子育て応援手当です。現行の児童手当に上乗せして受け取れる現金給付で、金額は18歳までの子ども1人あたり2万円です。具体的な支給対象者は、令和7年9月30日時点で児童手当を支給されている児童がいる世帯と、令和7年10月1日~令和8年3月31日までに生まれる新生児がいる世帯です。

所得制限はなく、すべての子育て世帯が支給の対象です。受け取るための申請手続きは特に必要ありません。いま児童手当を受け取っている口座に自動で振り込まれます。

支給時期は令和8年の春を予定しており、決まったら子ども家庭庁から発表されます。

*出典:子ども家庭庁 物価高対応子育て応援手当

今回の物価高対応子育て応援手当は1回限りですが、高市内閣では他にも次のような支援策が検討されています。

  • 児童手当のさらなる拡充
  • 保育士などの待遇改善など

繰り返しますが、この手当を受け取るための申請手続きは必要ありません。もし申請を求められることがあれば詐欺と考えて間違いないでしょう。お子さまが何人かいるご家庭では、支給した金額が足りなかったので申請してくださいなど「あれっ?」と思わせるような言い方で騙そうとするケースがあります。詐欺はお金を盗られるだけでなく口座情報を悪用される恐れもありますので、くれぐれもご注意ください。

おわりに

高市政権の発足後すぐ、10月27日に日経平均株価が5万円超えを記録し、高市トレードという言葉が生まれました。女性初の総理大臣の誕生によって日本経済がどれくらい良くなるか、投資家からの期待が込められていることが伺えます。高市総理は外交スキルも高いので国内からの期待も大きいですが、反発する諸外国もあるようです。これまでの政権では諸外国に対して異常に弱腰で対応していましたが、高市内閣の国務大臣の面々を見るとこれからは強気の対応が期待できそうです。高市総理が掲げるとおり、日本列島を強く豊かに、私たち国民の生活も豊かに成長する国になることを望みます。
*出典:高市早苗 主要政策

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