こんにちは。保険代理店サークルの菊地です。

最近トランプ関税が話題になっています。関税とはモノにかかる税金ですが、消費税と違って普段の買い物で意識することは少ないでしょう。しかし、トランプ関税が発動されれば今後の私たちの生活にいろいろな影響が出てきます。

今回のコラムでは、トランプ関税で起こりうる影響について、私たちの家計やNISAなどの投資に絞って分かりやすく解説します。

トランプ関税って何?

トランプ関税は、アメリカの大統領ドナルド・トランプ氏が発動しようとしている税制の呼び名です。

まず、そもそも関税とは何かを簡単にご説明します。それを踏まえたうえで、トランプ関税の内容とそれによって起こる影響について解説します。

関税とは、他の国からモノ(貨物)を輸入する人が、輸入する国に対して納める税金です。個人輸入の場合、輸入する貨物が一定額以下なら関税は免除されます。よって、主に関税がかけられるのは法人が商業輸入する貨物です。関税の税率は、貨物の品目や貨物を輸出する相手国によって違います。

なぜ輸入品に関税がかかるのでしょうか。それは、ある品物の値段が自分の国より外国のほうが安い場合に次のような影響が出るからです。

外国の輸入品を誰でも自由に安く買える

国内の同じ品物は値段が高いので売れなくなる

その品物を作っている国内業者が価格競争に負けて、会社がつぶれたり従業員が失業したりする

倒産や失業が相次ぐと、国内の経済や雇用が悪化する

トランプ関税はトランプ大統領が目指すアメリカファーストの手段のひとつです。要するに、アメリカの国内産業を保護し国民の雇用を安定させるのが目的です。さらに、高い関税率を課すことでアメリカの税収も上がります。輸入にコストをかけることで多くの経済効果が期待できるわけです。

トランプ関税の具体的な内容は次の2つです。

  1. 関税の上乗せ:上乗せされる関税を追加関税と言います。その税率は10%です。加えて、鉄鋼・アルミや自動車などの品目についてはさらに高い追加関税が課されます。
  2. 関税率の引き上げ:関税率が引き上げられるのは、関税措置のうちの1つである相互関税です。輸出入をしている相手国の関税率と同じくらいにアメリカの関税率も引き上げるぞ、という対抗措置です。引き上げ率は国ごとに異なりますが、中国に対しては大幅な引き上げ率となっています。そのため、中国側もアメリカに対して相互関税の引き上げを発動しています。なお、中国以外の国に対しては相互関税の引き上げを90日間停止するとしています。

トランプ関税で世界経済はどうなるの?

トランプ関税が発表されたのは2025年4月2日です。発表後、世界各国がアメリカに対して相互関税率を引き上げる報復措置を取ろうとしています。これを報復関税と言います。

報復関税で世界中の関税が上がると、世界経済はどうなるでしょうか。予想される流れを簡単に見てみましょう。

関税は輸入コストとして物価に上乗せされるので、関税率が上がれば当然物価も上がります。急な物価高に対しては賃上げなども追いつきませんので、消費者の買い控えが起こります。モノが売れなくなると企業が存続できなくなるので失業率が上がります。

さらに、物価高でインフレが加速すると株式市場にも動きが出てきます。投資家が損失を避けるために株を大量に売ったり、国がインフレ抑制のために政策金利を引き上げたりすると、株価は下落します。たくさんの企業の株価が下がるとその国の指標も下がります。日本の指標は日経平均株価や東証株価指数などです。指標が下がるということはその国の経済の低迷の表れというわけです。

これらの動向を長期的に踏まえると、トランプ関税の発動によって世界経済の悪化が予想されます。

私たちの生活への影響は?

日本で生活している私たちは、トランプ関税の発動からどのような影響を受けるでしょうか。

生活に一番直結する影響は物価の高騰です。もし日本がアメリカに対して報復関税の措置をとって関税率を上げれば、輸入コストとして私たちが支払う物価に上乗せされますので、アメリカからの輸入品は値上がりすると考えられます。加えて、トランプ関税によって世界各国でインフレが起こるとすべての輸入品の物価が高騰します。輸入品が高くて買えなくなってしまうと今度は国内のモノの需要が上がるので、日本産のモノの物価も上がるでしょう。
ただし、国内の需要が上がれば企業の業績や雇用は上向きになると考えられますので、将来的に日本の景気は良くなるかもしれません。もっとも、高齢化社会で働き手が不足している問題はありますが…。

ところで、中国のECサイト『SHEIN』と『temu』は、アメリカのみ値上げが決定したようです。今後はLenovoなどの中国メーカー品にも影響があるでしょう。現段階は米中貿易摩擦の状態にとどまっていますが、いずれ日本や世界各国に影響が飛び火しそうです。

*出典1:Bloomberg News 中国ネット通販Temu、米で価格2倍以上も-関税コスト転嫁
*出典2:Bloomberg News 中国ネット通販SHEIN、米国で最大377%値上げ-関税が消費者直撃

NISAで投資しているんだけど損しないか心配…

2024年1月から新NISAがスタートしました。NISA口座で投資している人は、トランプ関税ショックで多少なりとも相場の下落を目の当たりにしているのではないでしょうか。これ以上損をしないうちに売却してしまったほうがいいのか悩んでいる方も多いでしょう。

相場が上がったり下がったりするタイミングを狙って売買することを投機と言います投資投機と違い、時間を使ってするものです。10年や20年という待ち時間を用意して、値動きを見ながら運用を続けるのが投資です。
下落や元本割れで焦ってしまい、これ以上損したくない一心で売却してしまうことをパニック売りと言います。しかし、十年先を出口に設定しているなら一時的な下落に振り回される必要はありません。そもそも相場というものは、短期的には上がったり下がったりしつつ長期的には上がり続けるものだからです。

参考までに、2023年と2024年の世界株式の推移をグラフで見てみましょう。

*出典:日興アセットマネジメント 2023年の株式市場の回顧と2024年の展望 ●2023年の世界の株式市場の振り返り


*出典:日興アセットマネジメント 2024年の株式市場の回顧と2025年の展望 ●2024年の世界の株式市場の振り返り


それぞれ1年間だけで見ても緩やかに上昇していることが分かります。

さらに、新NISAで人気銘柄と言われるオルカン(オールカントリー:全世界株式)の過去5年間の推移もグラフで見てみましょう。

*出典:日本経済新聞 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
*2025年4月30日時点の表示グラフ


このように、待てば上がるのが相場です。毎月同じ金額を投資して安い時は多く、高い時は少なく買う『ドルコスト平均法』は、時間を有効活用できる代表的な投資手法と言えます。ですから、一時的に値下がりしても上がるまで待てる時間がある人は焦って売却する必要はないでしょう。値上がりしてから売却して他の銘柄に乗り換えても遅くはありません。

トランプ関税ショックで今の生活費に影響がある人や、これまで積み立ててきた学費や老後資金に影響がある人は、現状把握と資金計画の方法をファイナンシャルプランナーがお手伝いします。ホームページのお問い合わせまたはお電話でFP相談のご予約ができますので、お気軽にお問い合わせください。

最後に

トランプ氏が大統領になったのは2回目です。今回のトランプ関税ショック以前、2016年11月にトランプ氏が第1期政権に当選したときにも株価は暴落しています。逆に、2024年7月には日経平均株価が史上最高値を更新したこともあります。この理由は、日銀のゼロ金利政策のおかげで多くの投資家が日本株式に投資したからです。
先のグラフでも分かる通り、相場はさまざまなリスクにさらされて常に上下するものです。コロナショックのように予測が難しい原因もあるので絶対に損しない投資はあり得ません。投資のポイントは下落したあとどれくらいの時間で上昇するか、先を見通す力です。

サークルでは、NISAやiDeCoなどの資産運用アドバイスや、緊急予備資金として備えられる保険の相談を承っております。ホームページのお問い合わせまたはお電話で来店予約できますので、ぜひご相談ください。